イトナミダイセン藝術祭の目玉企画!「長田舞踏ミュージカル☆伝統ブギ」の演出家に聞く

書き手プロフィール
矢野竜広
1980年生まれ。会社員コピーライター、放送作家を経てフリーランスに。2013年、住み慣れた東京を離れて鳥取県へ。自宅にオフィスヤノを構え、WEBデザイナーの妻とともに夫婦で在宅ワークにいそしむ。無類のビール好き。 ブログはビアエッセイ・ドットコム。ツイッターのフォローはこちらから。
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11月2日からイトナミダイセン藝術祭が開催される。
今回、最も注目のプログラムに挙げられるのが、
長田集落の住民による「長田舞踏ミュージカル☆伝統ブギ」。
一体どんな経緯で企画が進み、何をテーマにしているのか。
演出・脚本・振付という立場で日々、熱心に指導にあたる
舞踏家で振付家の目黑大路さんに話を聞いてきた。

出演者と密なコミュニケーションを築いて熱血指導。

今回、ミュージカルに出演するのは26歳から83歳の集落の住民。言わば、演劇を生業にしていない市井の人々だ。指導するうえで大変なこともあるのではないだろうか。日々の稽古についてまず伺った。

「皆さん、舞台で踊ることは未経験なわけですから、当然わからないことだらけです。こちらが意識しているのはエネルギーをばんばん出すこと。目線の位置や声の大きさ、手の動きに至るまで一つひとつを一人ひとりにエネルギー全開で実際に私がやって見せています。皆さんお仕事もありますので週末を中心に稽古を行っているのですが、もう土日はクタクタになってしまいますね(笑)」

目黑さんがこのミュージカルにかける思いは大きい。稽古が始まる前には時間を取って出演者全員にインタビューをしたそうだ。

「より良い台本を作成するためにそういう機会を持ちました。やるからにはここでしかできない舞台を作りたいという思いが私にはあります。日本という国が衰退していくなかで、移住や移民という問題は避けられません。今回、地方の一集落で行うということで、このテーマなら現代性もあるうえに演者さんもお客さんも共有できるのではないかと思いました。演者さんとお話をして感じたのは、皆さん“受け入れ型”だということです」

前代未聞のようにも思える今回の企画。実は以前から目黑さんは同様の取り組みを行っていたそうだ。

経験があったことと今回初めて経験すること。

「これまでもプロではない女性4人による舞台を手掛けたり、高校生とミュージカルを作ったりなど舞台を催してきました。そうした活動を大下志穂さんが毎回見に来てくれていたんです。大下さんとは鳥取藝住祭のアーティストインレジデンス事業で出会いました。当時、私は鳥取に移り住んだばかりで事務局にいましたね。アートとお金のことを現場で学びたいという思いがありました。大下さんには色々誘ってもらって、昨年もゑびすショーなどに出させてもらいました。今回も大下さんから話があって企画が動き出しました」

舞台のプロではない演者への指導経験はあったものの、住民150人という小さな集落でやるのは初めてのこと。当然、不安もあったという。

「作品を作るとき、物事のいいところだけではなく、悪いところも取り上げたいと考えています。“よかったね”“楽しかったね”で終わりたくはありません。もちろん皆さん、考え方が異なるので立場を鮮明にすることで摩擦が生まれる可能性があります。“そこは突っ込んで大丈夫なのか?”と自問自答します。でも、やっぱり突っ込まないといい作品は作れません。そういう意味でも今回はチャレンジでしたね」

「読んで納得がいかなかったら話し合いましょう」と演者に提案し仕上げた台本。生みの苦しみもあったようだ。

お金をいただくというプレッシャーが本番につながる。

「台本書きと振り付けは個人作業なので煮詰まってしまうこともありました。問題を取り上げるのだけど、きちんとそれが問題として起こっていて解決できているのか。話に筋が通っているのか。これがだんだん客観性がなくなっていくので結構大変なんです。結果、完成した台本に対しての異議は特になく、あとは稽古を重ねるのみだということになりました」

プロの目黑さんから見ても、長田の皆さんの成長具合は目を見張るものがあるそう。

「皆さん、本当に一生懸命やってくれています。最初の頃とは見違えています。自然発生的に“やるからには本気でやろう”という雰囲気も作られています。もちろん、お金をいただくわけですからそうでなければならないのですが。今回、前売りで1000円ですがこれって本当に大きいんですよ。500円でも“高い”と言われる世界ですから。でも、お金をいただく方がプレッシャーになって、必ずいい本番につながると私は考えています」

台本書きと振り付けと違って、演出に関してはその場その場で演者と話し合って詰めている。演者の自発性を大事にしながら、少しずつ舞台は完成に向かっているようだ。その先にあるものについて目黑さんはこう話す。

すべては舞台人を魅了する“場の一体感”のために。

「当日は演者さんにいい作品を見せてもらいたいですね。舞台をやっていると、演者とお客さんのエネルギー交換が発生して絡み合う瞬間に立ち会うことがあります。グルーブ感というのでしょうか、お互いが盛り上がるんです。良い公演であれば、演者が、公演中に楽屋で待機していても、舞台の良い雰囲気が伝わってくる。今回、1回でもいいのでその“場の一体感”を演者さんにもお客さんにも体感して欲しい。もうそのためだけにやっている、と言っても過言ではありません」

最後に、「長田舞踏ミュージカル☆伝統ブギ」の見所を聞いた。

「全部です(笑)。いや、本当に。演者の一生懸命な姿はもちろんです。彼らのことは信頼しています。会場の学校もいい雰囲気でだからこそ学園モノを着想しました。あとは作品に込めたテーマですね。移民や移住や受け入れること。見て楽しみながらも、みんなで一緒に考えて欲しいと切に願っています」

「長田舞踏ミュージカル☆伝統ブギ」は大山ガガガ学校にて。
11月3日(日)昼 開場12:30 開演13:00~14:30
夜 開場18:30 開演19:00~20:30
11月4日(月・祝)昼 開場13:30 開演14:00~15:30
入場料は前売り 大人1000円 中高生500円 小学生以下無料
当日 大人1200円 中高生600円 小学生以下無料

お問い合わせ・予約はこちらまで!
http://www.itonamidaisenartfestival.com/

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