“一升餅”なんて鳥取に来るまで知らなかった*ライターの移住月記

書き手プロフィール
矢野竜広
1980年生まれ。会社員コピーライター、放送作家を経てフリーランスに。2013年、住み慣れた東京を離れて鳥取県へ。自宅にオフィスヤノを構え、WEBデザイナーの妻とともに夫婦で在宅ワークにいそしむ。無類のビール好き。 ブログはビアエッセイ・ドットコム。ツイッターのフォローはこちらから。
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先日、七夕生まれの下の子が一歳の誕生日を迎え、一升餅を行った。一升餅ってどれだけの知名度があるのだろうか。僕は鳥取に来るまでそんな文化を一切知らなかった。

かけたのは、「一生」と「一升」。

「ん?自分もあまり知らないよ」という人のために説明すると、
一升餅とは、一升の米(約1.8kg)を用意して1歳の誕生日を祝うもので、風呂敷やリュックサックなどに餅を入れて背負わせるイベント。「一生食べ物に困らないように」「一生健康でいられるように」という思いに込められた「一生」と米の「一升」をかけている。
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うちでも義母が餅を用意してくれたので、子ども用のリュックサックに餅を入れ、
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よく状況が掴めていない子どもに背負わせ、
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そして、泣き出す、という一連の流れがある。もちろん、泣かずに余裕でハイハイする子もいるし、歩いてしまうような成長の早い子もいる。
 
ちなみに、長男のときは泣かずにハイハイを始めたものの、背負った餅の重みに何度もひっくり返り、笑いを誘った。
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何も選ばない=謙虚な人間?

そして、一升餅と同時開催されがちな儀式が「選び取り」。
「選び取り」とは、その子が将来、どんな仕事に就くのか?どんな才能があるのかを占うもの。こどもから離れた位置に色々なものを置き、何を選ぶか?を見守るイベント。
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用意したのは、そろばん、お金、ペン、米、筆 といったもの。それぞれ、商売上手になる、お金に困らない、文才がある、食べるものに困らない、字が綺麗になる などなどまあ色々な解釈ができるようになっている。

ところが、下の子はとにかく泣いて何も選ばないという事態に。これはどう解釈すればよいのだろうか。「自分が自分が!」ではなく、引くべきところは引けるような謙虚な人間になれる!という風にポジティブな解釈をしてもよいのではないか←。
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というわけで、身内一同が集まってくれて、楽しく次男の1歳の誕生日は終わったのだった。

“日本人としてのリハビリ”は続く。

自分は1歳の誕生日をニューヨークで迎えた。僕は0歳9カ月から2歳9カ月までの2年間を海外で過ごしている。だから、一升餅や選び取りなんてやっていない。
 
それは、アメリカにいたからという理由だけではない。うちの親があまりそういう伝統文化に熱心ではなかったからという理由の方がたぶん大きい。帰国し物心がついてからも、初詣すら行ったことがなかったのである。東京の片隅にてそんな家庭で育ち、大学卒業後は下北沢で一人暮らしを始めたものだから、とにかく伝統文化に疎い人間が出来上がった。
 
鳥取に移住してきてから、伝統文化に初めて触れることがとにかく多い。山菜採りなど季節ごとの食文化もそうだし、しめ縄や門松づくり、とんどさんといった年中行事系、「抱かれ子」という地域ならではの土着文化もこちらに来て初めて体験した。
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だから僕は、元東京人という目以上に外国人のような目で田舎の暮らしを見ているよなあと思うときがある。自分で大袈裟に「日本人としてのリハビリ」と銘打っているのだけど、根無し草のように生きていた30年の間に身に付けられなかった諸々の素養を今修得している節がある。そして、それってとても心地がよい。
 
都会で足が地に付かない生活を送り、文化的にも根無し草、住む場所も定まらず、なんだか落ち着かない毎日を過ごしている人って意外と多い気がする。そんな人が地方で腰を据えて暮らすと、本当に得るものが多いはず。たとえ自分はそうなれなくても、足が地につく生活をしている人が身近にいるだけで、落ち着いた気持ちになれると思う。不思議なことに。

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