博物館で田舎のケアの手厚さについて考えた*ライターの移住月記

書き手プロフィール
矢野竜広
1980年生まれ。会社員コピーライター、放送作家を経てフリーランスに。2013年、住み慣れた東京を離れて鳥取県へ。自宅にオフィスヤノを構え、WEBデザイナーの妻とともに夫婦で在宅ワークにいそしむ。無類のビール好き。 ブログはビアエッセイ・ドットコム。ツイッターのフォローはこちらから。
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少しずつ暖かくなってきてはいるが、まだまだ一日中外で遊ぶには早い。
そこで、とある休日、子ども達を屋内型の施設へ連れていくことに。
たまたま見つけたのが「島根県立三瓶自然館サヒメル」。
なかなか面白いスポットだなあと感じる一方で、
山陰ならではの良い点もまた見つけたので考察してみたい。

理科好きの子垂涎のスポット。

そもそも僕は三瓶山という山を知らなかった。「山陰の山=大山」で思考停止していた。三瓶山は島根県の中央、大田市と飯南町にまたがってそびえる火山である。そのダイナミックな自然を「見て」「ふれて」たしかめる展示を特徴とするのが「島根県立三瓶自然館サヒメル」。


地層の剥ぎ取り標本や骨の標本があったり、

現在進行形で生きている生き物に出会うこともできる。印象で言うと、小学4年生くらいの子が課外授業で訪れるようなスポットである。理科好きの子はたまらないだろうし、うちの子らのような未就学児もなんとなくノリで楽しめるし、大人も知的好奇心をくすぐられて楽しめる。そんな幅広い世代が楽しめる博物館である。

圧巻だったのがプラネタリウム。山陰地方最大の直径20メートルのドームスクリーンを有するシアター、ビジュアルドームの中で上映される。機材もなかなかの規模で、スクリーンに映し出される星の数はなんと36万5000個。双眼鏡で見ても楽しめるほどなのだとか。学芸員さんの質が高く、ゆったりした気持ちで冬の星空を学ぶことができた(声質もいいので眠くなる可能性も。後ろでいびきも聞こえた)。

恐縮してしまうほどじっくり案内。

あっという間に時間が過ぎてしまい、サヒメルの後に一家で「松江堀川地ビール館」に寄って松江の地ビール「ビアへるん」をたらふく飲むという密かに抱えていたプロジェクトは頓挫してしまったのだけど(残念!)、とても楽しく、そして学びに満ちた時間を過ごすことができた。
 
印象に残ったのは、スタッフの方々が丁寧だったなあということ。
僕らがぶらぶらしていると、近くにやって来て色々説明してくれたり、「プラネタリウムが見たい」と聞くと僕らのことを気にしてくれて細かく案内してくれたりした。

他に来館者があまりいなかったという面もあるけど、付きっきりで解説してくれた時間もあったので、こちらが恐縮してしまうほどだった。
 
こういう手厚いケアを受けることが鳥取に来てからすごく多いと感じる。東京からこちらに越してきた母もかつてこんなことを言っていた。
 
「東京では金融機関も役所も待ち時間がものすごいけど、こちらでは待ったことがないかもしれない。たぶん仕事のキャパシティに余裕があるんだろうね。私も不動産会社に長年勤めていて、担当するお客さんが増えれば増えるほどどうしても仕事が手薄になってしまった経験があるから、適度なゆとりは大事なことだと思う。この前、工事をしてくれた中海テレビさんが電話をしてくれたのね、“その後、インターネットの調子はいかがですか?”って。こういうフォローも担当件数が限界に近かったらきっとできないことだと思う」

“母ターン”で母が移住してきたのでインタビュー*ライターの移住月記 より

色々な面で適度なゆとりを保てているからこそ、サービスの受け手は手厚いケアを受けることができるのだ。
 

人が少ない。から始まる多様なメリット。

ことさらに東京を下げるつもりはないのだけど、東京では職業的役割に徹する人を多く見かける。
 
公務員や駅員、お店のスタッフや何かの案内係など「その人が一体どんな人なのか?」を考える余地なく、ただただ街の風景としてそこに存在しているような人をそこかしこで見ることができる。それはたぶん、一人がさばかなければならない人の量が多く、素の自分を出す余裕も必要もないということなのだろう。
 
良い悪いとかではなく、人が多いから仕方ないのだ。僕らが訪れたサヒメルのスタッフさんだって、もし来館者が多くて混雑していたら一家族に付きっきりになることなんてできない。業者だって契約者が多かったら“その後、インターネットの調子はいかがですか?”なんてアフターフォローをしている暇はなくなる。
 
こちらでは役割の向こうに“人”が透けて見えることが多い。たとえ役場の職員さんや消防士、配達員さんなどであっても。“〇〇さん”という個人名ありきなのだ。〇〇の集落の〇〇さんが〇〇という仕事をしているという感じ。
 
田舎は人が少ない。
 
事実は非常にシンプルだけど、そこから導き出される事象は実に多様性と奥行きに富んでいると僕は思う。

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