ネットがなかったら移住できなかったかもしれない*ライターの移住月記

書き手プロフィール
矢野竜広
1980年生まれ。会社員コピーライター、放送作家を経てフリーランスに。2013年、住み慣れた東京を離れて鳥取県へ。自宅にオフィスヤノを構え、WEBデザイナーの妻とともに夫婦で在宅ワークにいそしむ。無類のビール好き。 ブログはビアエッセイ・ドットコム。ツイッターのフォローはこちらから。
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過日、38度目の誕生日を迎えた。
ささやかなパーティーを振り返りながら、
ふとインターネットの恩恵に考えが及んだので
そこら辺について筆を進めていこうと思う。

38にもなって自分のバースデーケーキを自分で購入。

38歳の誕生日ともなると、もはやそんなに嬉しいわけでもないし、
気恥ずかしいので「別にいつもと同じでいいよ」と本気で思うのだけど、
そうは子ども問屋が卸さない。自分の誕生日じゃなくても
「パーティー=ジュースが飲める、ケーキが食べられる」
と思っているので誕生日会を開くことにした。
まあ僕としても食べたいものを妻が何でも作ってくれるし、
欲しいものを一つ自由に買えるため波に乗った方が何かと得なのである。

ところが当日、たまたま長男の体調が悪く、妻が外出できない。
(病気で心細くなるとママ依存が激しくなるため)
そんなわけで、次男と一緒に二人でスーパーに買い物へ。

38歳にもなって自分の誕生日パーティーで食べるものをしこたま買う。
この自作自演感漂う行為はなかなかに耐え難いものであった。
妻は看病で料理をすることもできないだろう、と
出来合いのオードブルを中心に買った。さらに、自らケーキも購入。
もしこのとき、誰か知り合いにカゴの中身を見られ、
「あ、誰かの誕生日ですか?」とか声をかけられなくて心底良かった。

買い物を終えて家に帰ると、なぜか長男の体調が戻って元気になっている。
そんなわけで、自分が好きな料理を家族と食べ、美味しいベルギービールを飲み、
子ども達の手紙(というか絵)をもらって僕はすっかり上機嫌になり、
さっきまでの「38にもなって何で自分の誕生ケーキ自分で買ってるんだ?感」を忘却し、
「あ~、俺は幸せ者だ!」と幸福感に包まれて誕生日を終えたのである。

YouTubeがきっかけで知の芋づる式現象発生。

ちなみに、誕生日プレゼントも事前に自らネット通販で購入。
家に届いたものを妻に渡し、当日子ども達から貰うという手順を踏んだ。
で、購入したのがこちら。

『社会学大図鑑』という、その名の通り、社会学の本である。
この本のチョイスに至るまでには伏線がある。

長年、深刻な世界史コンプレックスに悩まされていた僕は、
一念発起して世界史をゼロから学ぶことにした。
20代のときもそう思って世界史の教科書を買ったことがあったのだけど、
苦痛でしかなく北京原人辺りで読むのをやめてしまった経緯がある。

そんな反省から今回はYouTubeを活用することに。
毎日コツコツと授業動画を眺め、教科書(10年前に買ったやつ)で復習し、
世界史の面白さにようやく目覚めた。SNSでもその辺のことは発信した。
すると、今度は元々好きだった哲学を改めて学習したくなり、
哲学の授業動画を探して視聴し続けた。
(哲学者が時代の制約をこれでもかと受けている事実に驚いた)

哲学を学べば学ぶほど、僕にとっては、そこから派生した
社会学の方が学ぶ価値がある学問なのではと思えてきた。
というより、世界史を学んだことで社会学がいきいきした
非常に魅力的な学問に初めて思えてきたのである。
何を隠そう、僕は大学の社会学部社会学科出身。
が、1年生で受ける「社会学入門講座」の単位を1年、2年、3年と
落とし続け、4年で卒論の授業と同時に入門講座を受けるくらい
きわめて不真面目な学生であった。

「デュルケム」「ゲマインシャフト」「パノプティコン」…
およそ20年振りに目にするワードのかずかずに、
今は「よし、大学のぶんを取り返すぞ!」といきり立っているところだ。

99年の環境だったら移住に踏み切れなかった可能性。

鳥取県は大山町というのは見紛うことなき田舎である。
都会のように大学の公開講座などで世界史を学ぶことはできない。

が、今の時代はネットがある。誰もが分け隔てなく視聴できる、
無料の授業動画であっさり世界史コンプレックスを克服できた。
それだけではない。哲学史をまた一通り復習することもできたし、
改めて興味を持った社会学の本を簡単にネットで注文できた。
一連の流れの中で感じたことは随時、SNSで発信することもできる。

インプットした知識をアウトプットする仕事のフィールドも、
紙媒体だけでなくネットメディアが育ってくれているので、
発表の場は多様性に富んでいる。
SNS経由で仕事が入ることも増えてきた。
で、先方と会話のやりとりをするのもスカイプだったりする。
もちろん、都会にいる人もネットの恩恵を受けているけど、
恩恵の影響力で言ったら明らかに田舎の方が大きい。
田舎にはネットの代替手段が乏しいから。

それこそ僕が大学生になった1999年当時、ネットはあったけど、
今ほど便利では全くなかった。あの頃のインターネット水準だったら、
果たして僕は移住できただろうか?と考えると、
いや、なかなかに厳しいよなあ…と答えざるを得ない。
逆に今後、都会と田舎でできることの差をネットや新技術が今よりもっと埋めていけば、
なんでわざわざ人が多くて空気が悪くて家賃の高い都会に住んでるんだっけ?
となる人が増えると思う。鳥取の時代、来るんじゃないか。

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