大山町に空の鍋やタッパーを持った人が立ち寄る場所がある。
長田にある古民家コミュニティ「てまひま」。
これまでは月1で居酒屋形式で営業していたが、
4月からはテイクアウトのお店になっている。
立ち寄って談笑して、笑顔で帰っていく人達。
集落に鳴り響く夕方5時のチャイム。
まるでこの音を合図にしたかのように、お客さんがてまひまに入って来る。
みな一様に手に鍋やタッパーを持って、てまひまのオーナーであり、のまど間の管理人でもある薮田さんに手渡す。
そしてみな、彼女と少しのあいだ談笑し笑顔で帰っていく。
リレーのようにうまいことお客さんとお客さんがつながり、
店内が渋滞しないのが不思議だ。
やって来るお客さんの顔ぶれはさまざま。
若い主婦、お年寄りの女性、お孫さんと来た男性、
一人でやって来た男性、子連れのお父さん。
噂を聞きつけて安来からやって来た、という女性もいた。
花など薮田さんにお土産を持って来る人や
お客さんに混じってお仕事の依頼をしに来る人も。
4年前から毎月欠かさず続けてきたことで、
集落のコミュニティとしてさらに力を増している印象を受けた。
メニューボードを見ると、ハンバーグやおいなりさんなどが並ぶが、
メインはこちらに書いていないおでん。
メニューを見る人は実はあまりいない。
ほとんどの人が食べたいものを事前に予約しているし、
予約をしていない人も「おまかせで」という感じだから。
ゆるやかな空気が流れるてまひまのテイクアウト。
始まったのは先月から。
きっかけや考えたことなどを薮田さんに聞いてみた。
商売第一ではなくてお客様ファーストでやりたい。
「今回のコロナでうちはお客さんに高齢者が多いから悩みました。やっぱりここで何かあったら…と思って先月から居酒屋営業は自粛しましたね。利用してくれる人からは、“テイクアウトでも月1回続けてくれるのは嬉しい”とか“晩御飯を作らなくていいから助かる”とか言ってもらえて、少しは役に立ってる?と思ってます(笑)」
お酒を販売しないぶん、当然のことながら売上は下がった。でも、コロナ後の方が忙しくなっているそうだ。
「居酒屋の売上が下がったぶん、5組限定で週末のカフェもするようにしました。それと、お菓子の販売。お土産として買ってもらえたらいいなと思って。お菓子作りは小学生のときから好きだったんですよね。毎週末にマドレーヌを作っていました。今日はブルーベリーパイがあります」
生活のため売上も大事にするが「お客様ファーストでやりたい」、そう薮田さんは言う。
「やっぱり助かる人、喜んでくれる人がいるから続けてるというのはあります。おでんをメインにしたのも、お一人でお住いの方が鍋ものを作らないからなんです。高齢者って作りそうなイメージありますよね?でも意外と作らないんですよ。揚げ物も面倒という声をよく聞くので、ここでは積極的に揚げるようにしてます」
手間ひまをかけることを忘れないように。
4月から始めたテイクアウト。今後はどうなっていくのだろう。
「今回始めてみて感謝の声をかけてもらえるので、ずっと続けてもいいかも?と思っています。居酒屋の再開はまだ考えていないですが、再開後も同じ日にお持ち帰りありにしてもいいかなって。1日ずらすとかでもいいですしね」
次回のテイクアウトは6月24日(水)。利用にはいくつかの注意点がある。
「予約は3日前までとお願いしています。水曜なので日曜中ですね。っていうのは、おでんの仕込みを3日前から始めるからなんです。うちは店名が“てまひま”じゃないですか?これは自分に“てまひまかけることを忘れないように”と言い聞かせる意味もあるんです(笑)。あとは鍋やタッパー持参で来てください。料理もそんなにたくさんは作りません。容器も食べ物も無駄にしないエコがいい。だから突然の来店の場合、買えないこともあるかも。そのときはごめんなさい!時間はお昼から20時くらいまでですかね。よかったらぜひ利用してください」
4月の初回と比べて5月の2回目は予約する人が減ってしまったそう。
大山町在住の皆さん、最終水曜日はぜひてまひまの料理で夕飯を!
のまど間の住人さん達は管理人自らがデリバリーしに行きます。