“無理をしない”“頑張らない”男が32歳で地域組織を率いることになった理由

書き手プロフィール
矢野竜広
1980年生まれ。会社員コピーライター、放送作家を経てフリーランスに。2013年、住み慣れた東京を離れて鳥取県へ。自宅にオフィスヤノを構え、WEBデザイナーの妻とともに夫婦で在宅ワークにいそしむ。無類のビール好き。 ブログはビアエッセイ・ドットコム。ツイッターのフォローはこちらから。
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大山町では、10に分けられた地区ごとに地域組織が運営されている。
その一つ、逢坂地区の「やらいや逢坂」を率いる小林直哉会長は現在、33歳。
なぜそんなに若くして老若男女を束ねる地域組織の会長になろうと思ったのだろうか?
また、どんな思いや考え方で会長を務めているのだろうか?
色々聞きたいと思ったので、本人に直撃してみることにした。

「アクティブシニアがメインで最年少は僕」。

インタビューしたのはやらいや逢坂の拠点、まぶや。このコミュニティスペースを主な舞台に、やらいや逢坂は様々な活動を行っている。始めに取り組んでいる活動内容について聞いてみた。

「2014年に立ち上がったやらいや逢坂は、〇〇屋の呼び方に統一した事業を掲げています。メインは“集まらい屋”でこのまぶやでカフェ運営をしたり、地区内の19集落を訪ねて交流会を開いたり、メンバーが先生役になる“まぶなび楽級”を開催したりしています。

“稼がい屋”は収益事業で月に1回のフリーマーケットやまぶカフェ1日店長など、スペース貸しをしています。その他、“育てらい屋”部門で“冒険遊び場きち基地”という子ども向けイベントをしたり、“暮らさい屋”で空き家発掘をしたり、“若がえらい屋”で健康づくり活動をしたりと幅広くやっています。定例会は月に1回で委員さんは約25名、アクティブシニアの方がメインで会長の僕が最年少です」
まぶカフェ1日店長の様子。ランチタイムはお客さんで賑わう。

「これだけの事業を回せているだけで、ようやってると自分で思いますよ」と微笑む小林さん。会長に就任したのは2016年4月。当時32歳、最年少にもかかわらずなぜ会長に就任することになったのだろうか。

就任の理由は「モヤモヤした空気が嫌」だから。

「僕、モヤモヤした空気が好きじゃないんですよ」

小林さんは独特の表現で就任理由を明かす。モヤモヤとは一体?

「前の会長さんが任期切れでやめるとき、誰かおらんか?っていう話になったんです。手を挙げる人が出そうになかった。でも、前会長は2年でやめる意思を固めている。すると、誰が会長になるんだ?ってモヤモヤした空気になるじゃないですか。僕、その時間が無駄だと思ってしまうので“じゃあ、やります”と言いました」

立候補に不安はなかったのだろうか。

「できる範囲でやればいいかなと思ったんで。それを超えたら“できません”と言えばいいだけですからね(笑)。大変そうだなとは思いましたけど大変なのはいいことですし、実働部隊や事務もいますし。あとは自分にとってきっとプラスになると思ったんです。

今、集落の区長は親世代ですが、地域自主組織会長としてそこに交じれているのですごく勉強になります。それと、30代前半が代表になることで若い世代も参加できるんだ、と思ってもらえるかなっていう思いもありましたね」

Uターン後、地域活動に興味を持つように。

地元の高専を卒業後、岡山の会社に就職した小林さん。結婚して子どもが生まれ、地域活動に参加する時間的余裕は当時なかった。その後、27歳で大山町にUターンをして第一次産業に関わるようになると、自然な流れで地域活動に加わるようになっていた。

「最初は“築き会”という若手起業家の任意団体の活動に参加するようになって、その拠点としてコミュニティスペースのまぶやづくりが始まりました。このとき、まぶやがある逢坂地区の地区会議(やらいや逢坂の前身)にも加わりました。逢坂地区は僕の住む地区でもあるので、築き会とやらいや逢坂の橋渡し役になれればいいかなとも思いましたね。このまぶやは今も築き会とやらいや逢坂、2つの団体の拠点となっています」

岡山時代にはできなかった地域活動。今は家族で営む農業の会社を切り盛りしながら、地域の活動にも力を入れることができている。

「自分で事業をやっていると、仕事と町づくりの境界は曖昧になってきますよね(笑)。町づくりでやっていることが仕事にフィードバックされることもありますから。僕には転勤もありませんし、ここでずっとやっていくので、やらいや逢坂の活動で色々な人と知り合えるのはありがたいことです。地域を活性化していくことで、産業にもいい影響が与えられるかもしれないという気持ちでやっています」

やらいや逢坂のイベント時の集合写真。

無理したら続かないので「頑張らない」。

仕事と町づくり。両輪を回して2年が過ぎた。どんなことを心がけてやってきたのだろうか。

「僕は継続性が一番大事だと思っています。勢いがあっても2~3年で終わったら意味がありません。長く続けていくことの方が大事。そのために、細かいところや仕組みをいじくったりしています。本当にちょっとずつですけどね。

あとは無理をしないこと、ですね。こう言ってしまうとあれですが、頑張らない。これは自分のモットーかもしれません。無理をしたら続かないので、僕自身はゆるくやっています。周りに任せてばかりなので、周りの人は大変かもしれませんが(笑)」

とはいえ、例のモヤモヤした空気になったときは自分が動く。

「何かで人を募ったとき、誰も手を挙げないときは手を挙げます。うん、僕が心がけているのはこれくらいかもしれませんね」
まぶやの中には大山町の移住交流サテライトセンターも併設されている。

自分がやめてモヤモヤするくらいなら続ける。

最後に、小林さんに“理想の町”について聞いてみた。

「100年後の明るい姿が想像できる町、ですかね。町に若い子がいなかったら、未来を想像しても暗いですよね。子どもは減っていますけど、自分たちがアクションを起こすことでUターンやIターンが増えるかもしれない。将来を見据えて活動しているようなところはあるかもしれません。少しずつよくなっていると思います。未来を想像してネガティブだったら、いま手を打てばいいだけですしね」

現在33歳。町づくりは何歳まで続けていくつもりなのだろうか。

「自分が住む町ですから、やらいや逢坂はたとえ形が変わってもずっと続いて欲しいと願っています。個人的には地域活動は生涯現役です。会長職はやりたい人がいたらどうぞどうぞ!という感じ。今はいませんがどこかで立候補する人も出てくると思いますよ。自分がやめて“誰がやる?”ってモヤモヤするくらいなら続けさせてもらいます(笑)」

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